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『人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門』
中土井 僚 著
PHP(2014年)
U理論とは、過去の延長線上にない変容やイノベーションを個人、ペア、チーム、組織やコミュニティ、そして社会で起こすための原理と実践手法を明示した理論。私たちがこれまで慣れ親しんできたPDCAに代表されるような手法が、いわば「過去からの学習」によるものだとすれば、U理論は、「出現する未来からの学習」によって変容やイノベーションを生み出していこうとするものだといえる。
「出現する未来からの学習」とは、分かりづらい独特の表現だが、それは例えば、芸術家がヒラメキをもとに、それにカタチを与えながら作品を生み出していくプロセスのようなもの、ということができる。ただ、ここでいう「イノベーション」とは、芸術のような独創的な狭い意味の活動だけを指すのではなく、私たちが日々の日常の中で執っている「構え」「姿勢」「態度」といったものの在り方が創造的であるか否かといった、広い意味を示すもの。つまり、U理論とは、私たち(個人/ペア・チーム/組織・コミュニティ/社会)が、常にワクワク、イキイキと創造的に活動を続けるためにはどうすればいいか――その原理を明らかにしたものだといえる。
「原理」の全体像を短い言葉で表現するのは困難だが、U理論の入り口にあって鍵を握る「ダウンローディング」の概念に沿ってその一端を紹介すると――。ダウンローディングとは、「過去の経験によって培われた枠組み」を再現している状態のこと。例えば、ある人と接する際、無意識のうちにも従来からの「思い込み」や「パターン」に乗っかって惰性的に聞き、惰性的に話をするといったことであり、私(個人)あるいは私たち(チームや組織)は、しばしばこうしたダウンローディングな心の状態に陥った日々を送っている。
こうしたダウンローディングな状態、すなわち「停滞した」あるいは「凝り固まった」ような状態を解きほぐし、イキイキとした状態へと導いていく、そのためのテクノロジー(メソッド)がU理論だ。
停滞した状態が解きほぐされ活動的な状態へと転じていく、その様は、例えていえば、氷(固体)が融けて水(液体)になり、さらに熱を加えていくと沸騰する、その過程における分子の熱運動のようなもの。ほとんど動かなかった氷の分子が、0度の温域を超えると一気に自由に動き始め、その後さらに動きを活発化させていく――そんなイメージとして捉えることができよう。
「氷」のように硬直した組織は、どうすれば「水」に変わるのか? この種の問題を解くにあたり、従来は「何を(What)どうするか(How)?」というアプローチが採られてきたが、これを「誰(Who)」という視点から解き明かしたのがU理論の画期的な点。「自分は何者なのか、行動を起こす源(source)は何か」というスタンスが、U理論の基本となっている。
複雑性の高いさまざまな問題がグローバルレベルで広がる今日、特定の誰か、あるいは機関だけが主導して中央集権的に問題を解決するのは不可能な時代を迎えている。こうした時代にあっては、誰がリーダーで誰がフォロアーかという枠組みを超えて、誰もが名も無きリーダーとして力を合わせるコレクティブ・リーダーシップ(集合的なリーダーシップ)なくして複雑な問題を解決する途はなく、そうしたリーダーシップによる創発(Emergence)を社会的に起こすテクノロジーこそがU理論だと、著者は力を込めて語る。
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プロローグ
- U理論とは、過去の延長線上にない変容やイノベーションを個人、ペア、チーム、組織やコミュニティ、そして社会で起こすための原理と実践手法を明示した理論。
- U理論の最も特徴的なのは、優れたリーダーの「やり方」に着目するのではなく、ブラックボックスになっている彼らの「内面のあり方」、すなわち高度なパフォーマンスや変革が起こる際の「意識の変容」に着目している点。
- 私たちはこれまでPDCAサイクルに慣れ親しんできたが、それは「過去からの学習」。それに対して「出現する未来からの学習」は、まず直感として現れ、どこかに引き寄せられるような感覚、「なぜ」というより「何」という感覚を頼りにしていくもの。
第1章 人と組織が「頭を抱える問題」を解決する
- 世界中のトップクラスのリーダー130人にインタビュー。「盲点となっているのは何を(What)どうやるのか(How)ではなく、誰(Who)という側面。リーダーが何を実行するか、どのように実行するかではなく、個人としても、集団としても、自分は何者なのか、行動を起こす源は何か、にある」との結論にたどり着いた。
- U理論は、「何か(What)」でも「やり方(How)」でもない領域である「誰(Who)」を転換することで、過去の延長線上にはない変化を創り出す方法。
- 90年代初頭までは業務効率化が、すなわち「やり方」が優れていることが、競争優位性を担保していた。しかしITによるデジタル化の波が押し寄せ、もはや業務効率化は当たり前のことに。これまで存在していなかった何かを生み出す創造性こそが鍵になった。U理論はそれを明らかにした。
- いま遭遇している問題が「煩雑な問題(ジグソーパズル型の問題)」か「複雑な問題(ルービックキューブ型の問題)」かを見極めることが重要。複雑な問題は、当事者間の関係性が「相互依存関係」にあり、これこそが問題の解決を困難にしている。
- 複雑な問題には3種類ある。
- ダイナミックな複雑性=きわめて多様な要因が絡みあい、原因と結果が空間的、時間的に離れていることによって生じる複雑性。私たちの認識できる範囲や、影響を及ぼせる範囲を超えたところでさまざまな動きが生じ、それらが私たちには見えない形で互いに影響を及ぼしあっている。→システム全体で解決
- 社会的な複雑性=関係者の間で価値観、信念、利害が相反していたり、経験の差に開きがあったりすることによって生じる複雑性。→関係者が一同に会して解決
- 出現する複雑性=これまで遭遇したことのない予測不可能性が高い変化によって生じる複雑性。→出現する未来の創発で解決
第2章 U理論が起こすパラダイムシフト
- U理論の観点1=出現する未来からの学習: 自分の内面を掘り下げ、内側から湧き上がってくるものに形を与え、そこから肉付けをしていくというプロセスをたどる。
- U理論の観点2=行動の「源」への着目: 「その行動をどこからやるのか」という「源」=Who=その状況に臨んでいる自分が「何者としてその場にいるか」
- U理論の観点3=ソーシャル・フィールドに着目した3つのプロセス: どの時間にも空間にもイノベーションの「種」は宿っていて「芽」を出し得る。出るかでないかは「土壌の質(ソーシャル・フィールド)」にかかっている。①ミクロ的な意味=その瞬間、その瞬間の個々人の内面と場の質のこと。②マクロ的な意味=グループ、チーム、組織、社会などを俯瞰してみたとき、どんな意識状態にあり、どんな雰囲気、文化、風土を醸し出し、どんな制度や機構によって構成されているかなどを総体として捉えた状況。
- U理論の3つのプロセス:
- センシング=ただ、ひたすら観察する
- プレゼンシング=一歩下がって、内省する。内なる「知(knowing)」が現れるに任せる
- クリエイティング=素早く、即興的に行動に移す
第3章 本質的な変容を起こすU理論の7つのステップ
1)ダウンローディング(Downloading)
- 「過去の経験によって培われた枠組み」を再現している状態。私たちは過去の枠組みを「再現」し、次いで「黙殺」「否定」、時には「思考停止」という手段によって、自動的にその枠組みの存続を図ろうとする。
- ダウンローディングが起こっている時は、その人の「枠組み」を否定しないように、周囲はその「枠組み」に合わせてさしさわりのない態度をとる、いわゆる「イエスマン」と化す。
- ダウンローディングは、周囲からの情報を歪んで処理することで、その都度、その都度の意思決定の質を下げ、周囲のモチベーションダウンを起こし、周囲からの協力や情報収集の循環が途切れ、自分だけでなく周囲のインスピレーションを阻害するという弊害を起こす。そして、「この会社には先はない」といった枠組みが充満することで諦めが蔓延し、イノベーションが起こりうる風土自体がなくなっていく。
- 人は自分の生存が脅かされると感じた時、自動反応的になり、過去の枠組みを再現してしまう。
- VOJ(Voice of Judgement:評価・判断の声)は、ダウンローディングの状況にあるとき、自分の中で沸き起こるコメントや雑念のこと。このVOJに気づき、自分の内側で起きている思考や感情そのものを客観視できるようにする。ダウンローディングに聞いている状態/話している状態/ダウンローディングな心的態度
- 評価・判断、結論や決めつけをいったん保留し、どこにも着地できない居心地の悪さに身を置き続ける=「保留」の状態を能動的に作り出すようにする。
2)観る(Seeing)
- 「観る」は、頭の中で起きている雑念に意識を奪われず、目の前の事象、状況、情報に意識の矛先が向けられている状態。
- 「ダウンローディング」から「観る」への移行は、「自分の前提や固定観念を覆すデータ」に触れた瞬間に、受動的に生じるのであって、能動的に起こせるものではない。したがって「待つ」しかないが、「待つ姿勢の質を高める」ことは可能。
3)感じ取る(Sensing)
- 「感じ取る」は、過去の経験によって培われた枠組みが崩壊し、枠組みを超えた側から今の自分や状況が見えている状態。「自分の中に他人の目玉が増える」こと。「〇〇さんの気持ちが分かった」という実感を伴う感覚。
- 場から感じ取る: ある場に存在するさまざまな目玉が自分の中に生まれ、その目玉を通して、まるで自分が体験しているかのように場を感じられる状態。他人の目玉だけでなく、自分がまだ経験していない「未来の自分の目玉」も含まれる。
- 「感じ取る」状態になったとき、「開かれた心」にアクセスする。VOJが消え、相手を一人の人間として受け入れている状態が生まれる。
- 「感じ取る」への到達を促すのは「内省と自己開示」。「内省」とは、ダウンローディングな状態で頭を巡っているVOJを保留し、そのVOJを生み出しているこの枠組みは何か、その下にある感情や本当の気持ちは何か、内側から湧き上がろうとしてしているインスピレーションや直感は何なのかを深く見つめること。「自己開示」とは、内省によって見えてきたことを他の人に明かすこと。自己開示の返報性。
- VOC(Voice of Cynicism:諦めと皮肉に満ちた声): 過去のある時点で、まるで判決をくだすかのように自分自身や他人に対して、もしくは人生そのものに対して諦めてしまったり、否定的な決めつけを行ったりしたときに生まれる枠組み。
4)プレゼンシング(Presencing)
- すべての人間は、進化する性質を備えていること、自己は1つではなく2つあると認識しておくことが大切。過去の経験から生み出された習慣的な自己(小さな自己)と、未来へ旅することによって生ずる高い次元の自己(大きな自己)。これら2つの自己が交わるとき、プレゼンシングの本質を感じ取ることができる。
- U理論の根本原理は、この「大きな自己」につながることそのもの。「大きな自己」につながったときにこそ、未来が出現し、その未来に導かれるようにイノベーションが生まれる。
- マイケル・レイ: 創造性を引き出す根源的な問いは「私の大きなSの自己(Self)とは何者なのか。私のなすこと(Work)とは何なのか」。
- プレゼンシングとは、最高の未来の可能性の源とつながり、それをいまに持ち込むこと。その状態に入ると、我々はほんとうの自分、正真正銘の自己である真正の自己へと入っていく。
- 「感じ取る」ことが視座を現時点の全体に移行するのに対し、「プレゼンシング」は出現する未来の全体の源、つまり出現しようとしている未来の可能性に移行する。
5)結晶化(Crystallizing)
- 「結晶化」するとは、未来の最高の可能性からビジョンと意図を明らかにすること。
- ビジョンは「どんな未来を望ましいと思うのか? なぜそれが望ましいと思うのか?」という価値観の違いに起因している、社会的な複雑性の高い命題。ビジョンは、議論によっては作ることはできず、対話によってしか生まれない。
- 力あるビジョンは、思想ではなく、源と、その源にたえず繋がる能力から生まれる。今、この瞬間に依拠している深い目的を表現したものである。
- 人と人、人と大きな現実が繋がったとき、その場の空気が変わる。この空間でうまれたビジョンなら信頼できる。大いなる意志の存在を感じて、それに従うだけでいいからだ。真のビジョンはあきらかになるものであって、つくられるものではない。
- U理論では、われわれという器を通して現れたがっているものに道を譲ることこそが、創造性と関連していると言っている。
- 「何でもいい、とにかく信じること。点と点が自分の歩んでいく道の途上のどこかで必ずひとつにつながっていく」(スティーブ・ジョブズ)。結晶化によって現れてきたビジョンと意図は、心と直感を通して、何の根拠もない確信だけを自分の内側にもたらしてくれる。
6)プロトタイピング(Prototyping)
- U理論における「プロトタイピング」の独自性:
- 結晶化までのプロセスを通して現れてきた“出現する未来”と繋がりながら形を与えていくこと
- 「頭の知性」「心の知性」「手の知性」を動員し、統合すること
- 宇宙との対話の中から紡ぎ出していくこと
- プロトタイピングはセンシング、プレゼンシングと切り離された別個のものではなく、そのプロセスを通して生み出された源とのつながりがあってこそ成立するもの。試行錯誤だけが独立しているのではなく、ひらめき、わくわく、試行錯誤は互いに切っても切れない関係にある。
- 創造のプロセスとは学習のプロセスであり、最初の時点でわかっているのは、成功するために何が必要かについての仮説であり、仮のアイデアにすぎない。小さな「U」を繰り返しながらプロトタイピングを進めていくからこそ、源とのつながりが維持されるとともに、ひらめき、ワクワク、試行錯誤の好循環が生まれる。
- 着想として得たインスピレーションに肉付けしていくのがプロトタイピング。目的・ゴールを達成する手段として仮説が有効なのかどうかを判断するパイロットプロジェクトとは、本質的に意味合いが異なる。
- 新しいことは、まず「感覚」として現れ、次にどこかに引き寄せられる漠然とした「知覚」として現れる。それは“なぜ”の知覚というよりは“何”の感覚。このなんとなく感じていること(心の知性)から手が動くに任せ(手の知性)、周りからフィードバックを得る(頭の知性)という一連の知性を動員し、統合する。
- さまざまな知見と専門性を持ち寄るプロジェクトにおいては、社会的な複雑性が高いため、合意形成が難しくなる。そういう状況では、言葉に依存したやり取りは非効率になるどころか、対立を生みかねない。そこで、自分たちの取り組みによってどんな状況を達成したいのかを、イメージとして目に見える形で共有し、感覚的に合意することで、次の行動をとりやすい状況を作り出していく。
- U理論においては、「シンクロニシティ」と呼ばれる偶然の一致が重視されている。シンクロニシティとは、起ころうとしていることに対して心を開くこと。「宇宙との対話」とは、身の回りで起きるあらゆる事象とダンスをするかのように偶然性の中に身を置き、そのプロセスそのものを楽しむこと。「宇宙は親切な場所だった」
7)実践(Performing)
- 「実践」のステップでは、プロトタイピングまでのプロセスを通して出てきた芽が、他の動植物、大洋や風雨といった周辺環境と作用しながら、大木となって根を張るために着目すべき原則が提示されている。
- Uの谷を潜り、プレゼンシングに辿り着き、何度も源に繋がることを習慣化していくことで、水平方向の協働を働きかける際にもダウンローディングに陥ることなく、対話の中から未来を出現させ、お互いに手を取り合って、活動を推進していくことが可能になる。
- 「問題を処理する」場合、私たちは「望んでいないこと」を取り除こうとする。一方「創造する」場合は、「本当に大切にしていること」を存在させようとする。何度もUの谷を潜り、プレゼンシングに至り、結晶化することで、「本当に大切なこと」が存在する。
- 水平方向と垂直方向の原則を交差させつつ、「実践」を繰り広げることにより、まるでオーケストラを奏でるようなダイナミックで調和のとれた変革が可能になる。
第4章 U理論の実践[個人篇]
第5章 U理論の実践[ペア・チーム篇]
- 一人での実践に比べ複数での実践では「+α」の要素が加わる。それは「立場、役割、主義、主張、文化、価値観、見解の違いといった境界線や壁を超えて、人と人との間につながりが生まれ、人としてのつながりを保ちながら、それぞれの立場を活かした協働が生み出される」こと。
- 「愛なき力は暴力であり、力なき愛は無力である」(マーティン・ルーサー・キング・Jr.牧師)
- Powerとは「生けるものすべてが次第に激しく、次第に広く、自己を実現しようとする衝動」。目的を達成しようとする/仕事をやり遂げようとする/成長しようとする衝動。Loveとは「切り離されているものを統一しようとする衝動」。バラバラになってしまったもの、あるいはそう見えるものを再び結びつけ、完全なものにしようとする衝動。
- Powerと Loveにはそれぞれ、創造的な側面と破壊的な側面があり、どちらかの破壊的側面が現れると、次第に両方の破壊的な側面を加速させ、破壊に向かっていく。
- Powerと Loveの創造的な側面は、二足歩行のように交互に現れる。Uの谷を下る左側が、Loveの創造的な側面を引き出すプロセス。Uの谷を上る右側がPowerの創造的な側面を引き出すプロセス。
- 関係を悪化させる「関係の四毒素」: ①非難、②侮辱・見下し、③自己弁護・防御、④逃避
- ループに潜む関係の悪化を加速させる2要素: 「決めつけと認識の歪曲」「自己正当化と犠牲者感」
- ビジネスシーンにおいては、「非難」や「侮辱・見下し」が心的態度として生じたとしても、あからさまな言動として表現されるのは稀。ほとんど「自己弁護・防御」「逃避」として表現される。前者は、自分に期待されている役割が分からない、ビジョンが見えないといった形で。後者は、発言を控える、自ら手を挙げて役割を引き受けない、肝心な場や会議に出席しない、煙に巻くような表現をする、当たり障りのない態度をとるといった形で。
- 相手の背景にある複雑性に気づき、相手の目玉を自分に取り入れ、まるで自分が見ているかのように相手の状況を「感じ取る」ことができれば、関係の四毒素強化ループから抜け出せる可能性が高まる。
- 相手やチームメンバーの目玉を取り入れるというのは、相手方の意見や行為の「内容」を認めることではなく、「そう考えるのは分かる」という「心境」にたどりつくこと。
- VOJは意識に上りやすいので発見しやすいのに比べ、VOCは潜在意識にあり、普段は意識できない。自分自身や相手、チームメンバーに対してどんな諦めの思いを抱いているのか、自分の内面を深く見つめるように内省し、それを発見していく。
第6章 U理論の実践[組織・コミュニティ篇]
- 「問題処理型」の組織/「未来創造型」の組織: 「創造すること」と「問題を処理すること」との根本的な違いは簡単。問題を処理する場合、私たちは「望んでいないこと」を取り除こうとする。一方、創造する場合は、「本当に大切にしていること」を存在させようとする。
- 問題処理に陥っているときは、望んでいない結末を避けるために望んでいないことを取り除こうとしている。
- 売上と利益を上げるのが目的で、理念とビジョンがその手段となってしまっている。これでは「問題処理型組織」から脱却できない。
- 理念やスローガンが単なる建前にならず、「本当に大切なこと」として存続するためには、それが「本当の想い」として結晶化できるかどうかにかかっている。「小さな自己」を超えた「大きな自己」につながったときは、「これが自分(たち)にとって本当に大切なことだ」と思えるようになる。
- U理論が切り込もうとしているのは、「本当に大切なこと」がいきいきと、まるで生命があるかのように存在している状態を生み出すこと。
- 「存在させる」だけでは効果は限定的で、「させようとする」働きかけがあってこそ、創造することに繋がる。
エピローグ
- グローバルレベルで広がる複雑性の高い問題に対して、特定の誰かや機関だけが主導して中央集権的に問題を解決するのは不可能。誰がリーダーで誰がフォロアーかという枠組みを超えて、開かれた思考、開かれた心、開かれた意志にアクセスし、誰もが名も無きリーダーとして力を合わせ、コレクティブ・リーダーシップ(集合的なリーダーシップ)を発揮していく。それなくして3つの複雑性を解決する糸口はない。
- コレクティブ・リーダーシップを偶然にゆだねるのではなく、意図的に起こしていくこと。それこそがU理論が生まれた理由。U理論は創発(Emergence)を社会的に起こすテクノロジー。創発とは、部分の性質の単純な総和にとどまらない性質が、全体として現れることを指す。
- U理論は、イノベーションを個人、集団、組織、社会のレベルで起こすためのテクノロジー。