ダイアローグ160809

マネジメントの核心は“経営理念の実践”にあり


[この本に学ぶ]
チェンジ・リーダーの条件~みずから変化をつくりだせ!
P.F.ドラッカー著
ダイヤモンド社(2000年)


「はじめて読むドラッカー」シリーズ三部作の第2作「マネジメント編」。ドラッカーのマネジメント論の中から著作10点、論文1点を精選し、抜粋・再構成することで、その最新洞察を紹介しています。

内容の詳細は下掲の「NOTE」に譲るとして、本サイトの中心テーマである「経営理念」との関連でいえば、ドラッカーが唱えるところの「マネジメント」とは、詰まるところ「経営理念の実践」だということができる。少なくともそれが核心をなす課題として位置づけられている、私は理解します。

例えば「マネジメントの役割とは何か?」との問いに対し、ドラッカーは次の3つを挙げていますが、このうち1.2.はまさに「経営理念」に直結するものだといえます。
  1. 組織に特有の使命すなわち目的を果たすこと
  2. 組織に関わりのある人たちが生産的な仕事を通じていきいきと働けるようにすること
  3. 自らの組織が社会に及ぼす影響を処理するとともに、社会の問題の解決に貢献すること
言い換えれば、マネジメントの役割として最も大切なことは、「経営理念の実践」にある――本書を通じて私は、改めてそう確信しました。




1.  マネジメントとは何か
1.1. マネジメントは理解されていない
  • マネジメントとは、現代社会の「信念」の具現である。資源を組織化することによって、人類の生活を向上させることができるという信念、経済発展が人類福祉の向上と社会正義の実現の強力な原動力になるとの信念である。
  • マネジメントは、資源を生産的なものとすることを託された機関、すなわち経済発展の責任を託された機関である。「組織」はすべて、生きた存在として機能するためにはマネジメントを必要とする。
1.2. 社会的機能および一般教養としてのマネジメント
  • マネジメントの役割は、共通の目標、共通の価値観、適切な組織、訓練と研鑽によって、人々が共同で成果をあげられるようにすること。
  • マネジメントとは何か
    1. マネジメントの機能は、人が共同して成果を上げることを可能とし、人の強みを発揮させ、弱みを無意味なものにすること。それこそ組織の目的であり、したがって組織の成功にとってマネジメントは決定要因である。
    2. マネジメントは人と人との関係に関わるものであり、それぞれの国、それぞれの土地の文化と深い関わりをもつ。
    3. あらゆる組織がその成員に対し、仕事についての共通の価値観と目標をもつことを要求する。それなくして、そもそも組織は成立しえない。したがって、あらゆる組織が、人を結集できる単純明快な目的をもたなければならない。マネジメントの責務は、これらの目的、価値観、目標について検討し、決定し、組織の成員に示すことである。
    4. マネジメントは、組織とその成員を成長させなければならない。
    5. 組織にあっては、意思の疎通と個人の責任が確立していなければならない。
    6. 組織の健康度と業績を計るために、多用な尺度が必要である。
    7. 組織にとって、成果はつねに外部に存在する。
2.  マネジメントの課題
2.1.  マネジメントの役割とは何か
  • マネジメントには、自らの組織が社会に貢献するうえで果たすべき役割が3つある。
    1. 組織に特有の使命すなわち目的を果たすこと
    2. 組織に関わりのある人たちが生産的な仕事を通じていきいきと働けるようにすること
    3. 自らの組織が社会に及ぼす影響を処理するとともに、社会の問題の解決に貢献すること
2.2.  われわれの事業は何か
  • 企業の目的は、それぞれの企業の外部にある。企業は社会の機関であり、その目的も社会にある。企業の目的は一つ、「顧客を創造する」ことである。
  • 顧客が価値を認め、購入するものは製品やサービスが提供するもの、すなわち「効用」である。
  • 企業には基本的な機能が2つある。それはマーケティングとイノベーションである。成果を生むのは、マーケティングとイノベーションだけである。
  • マーケティングの理想は、販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品やサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。
  • イノベーションとは、新しい欲求の満足をもたらす製品とサービスの創造である。人的資源や物的資源に対し、より大きな富を生み出す新しい能力をもたらすことである。
  • 企業の活動とは、マーケティングとイノベーションによる顧客の創造である。したがって、企業をマネジメントするということは、起業家的な活動である。もちろん管理者的な活動も必要だが、それは起業家的な目標に従うものである。構造は戦略に従うからである。
  • 「われわれの事業は何か」「われわれの事業は何になるか」「われわれの事業は何であるべきか」を定義する必要がある。そしてそれらの定義は「目標」に翻訳されなければならない。
2.3.  事業を定義する
  • あらゆる組織が、自らの事業についての定義をもたなければならない。明快で一貫性があり、焦点の定まった定義が、組織のよりどころとなる。事業の定義は、以下の3つの要素によって構成される。①環境としての市場(顧客や競争相手の価値観と行動)、②自らの目的・使命、③自らの強みと弱み
  • 事業の定義が有効であるためには、4つの条件を満たさなければならない。
    1. 環境、使命、強みについての前提が、それぞれ現実に合致しなければならない。
    2. 事業の定義に関わる3つの前提は、それぞれがたがいに合致していなければならない。
    3. 事業の定義は、組織全体に周知徹底しなければならない。
    4. 事業の定義は、たえず検証していかなければならない。
2.4.  NPOは企業に何を教えるか
  • ボランティアは無給だからこそ、大きな貢献をなし、仕事に満足してもらわなければならない。無給のスタッフが求めているものは、①活動の源泉となるべき明確な使命、②訓練、③責任
3.  マネジメントの責任
3.1.  企業の所有者が変わった
3.2.  いかにして社会的責任を果たすか
  • 組織の社会的責任は2つの領域において発生する。①それぞれの組織が社会に与える影響から発生する、②社会自体の問題として発生する。②は、社会そのもの機能不全から起こる。しかし組織は、社会の中においてのみ存在しうるものゆえ関心事たらざるをえない。
  • 組織は、①の社会的影響につき、組織の目的や使命の達成に不可欠なもの以外は極小化しなければならない。
  • マネジメントは召し使いである。主人は、彼がマネジメントする組織である。したがって、マネジメントの責任とは、自らの組織に対する責任である。…組織にとって最大の社会的責任は、その機能を遂行することである。
  • 権限をもつ者は、責任を負う。社会的責任を負うということは、常に、社会的権限の要求を意味する。…最大の社会的無責任とは、能力以上の課題に取り組み、あるいは社会的責任の名のもとに他から権限を奪うことによって、自らの機能を遂行する能力を損なうことである。
  • マネジメントに特有の倫理の問題は、彼らが集団的に見たとき、組織社会における主導的な地位にあるグループを構成していることから生じてくる。…彼らは主導的な地位にあるグループの一員である。しかしそのグループは、目に見える抜きんでた地位、権限を伴う地位にある。そのため、彼らには責任がある。…プロフェッショナルの倫理を要求されている。
4.  マネジメントの基礎知識
4.1.  マネジメントの常識が変わった
  • マネジメントの仕方は、組織によって違う。使命が戦略を定め、戦略が組織を定める。
  • 組織は、ともに働く人たちの生産性を高めるための道具である。そのようなものとして、組織構造は、ある状況のもとで、ある時点において、ある仕事に適合するというだけである。もはや万能の構造など存在しえない。あらゆる組織が、その内部に多様な組織構造をもたなければならない。
  • 今日の基本的な資源は情報である。情報は他の資源と違い、希少性の原則に従わない。
4.2.  「道具としての情報」を使いこなす
4.3.  目標と自己管理によるマネジメント
  • マネジメントとは、自らの率いる部門が、その属する上位部門に対して行うべき貢献、つまるところ、企業全体に対して行うべき貢献について責任をもつ者である。その仕事は、下に向かってではなく、上に向かって行われる。すなわち目標は、その属する上位部門の成功に対して行うべき貢献によって規定される。
  • 目標によるマネジメントの最大の利点は、支配によるマネジメントを自己管理によるマネジメントに代えるところにある。
4.4.  人事の原則
4.5.  同族企業のマネジメント

5.  起業家精神のマネジメント
5.1.  予期できないことを起こす
  • われわれは未来について、2つのことしか知らない。1つは、未来は知りえない。2つは、未来は今日存在するものとも、今日予測するものとも違うということ。
  • まず初めになすべきことは、明日何をすべきかを決めることではなく、明日をつくるために今日何をなすべきかを決めることである。そのような仕事を体系的に行う方法論としては、第一に「すでに起こった未来」を予期すること、第二に、ビジョンを実現すること、即ち自ら未来を発生させることである。
  • 未来に何かを起こすには、勇気を必要とする。努力を必要とする。信念を必要とする。
  • マネジメントたる者は、未来において何かを起こす責任を受け入れなければならない。責任に意識的に取り組むことこそ、サラリーマンから事業家を峻別するものである。
5.2.  既存の企業がイノベーションに成功する条件
5.3.  ベンチャーのマネジメント
5.4.  起業家がとるべき戦略