[この本に学ぶ]
『百年続く企業の条件~老舗企業は変化を恐れない』
帝国データバンク 史料館・産業調査部編
朝日新書(2009年)
※本書では老舗企業を便宜的に「創業・設立から100年を経過した企業」と定義している。
例えば、本書のサブタイトルとしても使われている「老舗は変化を恐れない」。この言葉は、老舗が「今後も生き残るために必要なものは?」との質問に対し、「進取の気性」との回答が「信頼の維持、向上」に次ぐ第2位を占めたことなどから導かれたもの。老舗企業の経営者からは「私たちは毎日変化しているから老舗という自覚はありません」といった言葉が異口同音に語られることが多く、本書では次のように言葉を結んでいます。「老舗には頑なイメージがあるかもしれないが実態は違う。老舗とは、もっとしなやかなものだ」
100年以上を生き延びてきた企業にとって「家訓・社是・社訓」が大きな意味を持ってきたことはアンケート結果からも明らかであり、その分析は本書の中心的なテーマとなっていますが、趣旨・内容で分類した結果、“カ・キ・ク・ケ・コ”の5つのキーワードが浮かび上がってきたとしています。「感謝」「勤勉」「工夫」「倹約」「貢献」の5つ(詳細は下掲の「NOTE」ご参照)ですが、これはまさに今日いわれるところのCSR(企業の社会的責任)やコンプライアンスに該当する概念であり、これらが、日本をして世界に冠たる“老舗大国”たらしめている大きな要因であることが分かります。

- 老舗企業の家訓・社是・社訓の趣旨・内容を分類すると“カ・キ・ク・ケ・コ”の5つのキーワードが浮かび上がる。
- カ=「感謝」
- お客様や自然の恵みに対する感謝の気持ち、取引先すべてに心を込めて商いするという精神。
- 近江商人の教えである「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)を家訓とする老舗企業も多い。
- キ=「勤勉」
- 正直でまっとうな商売を心がける、商売の本流をゆく、地道に努力していけば必ず報われる、といった勤勉独力の精神。誠実で謙虚な経営を続けるよう戒めること。
- ク=「工夫」
- 品質を最優先課題として、それを守り抜くこと、または技術を継承すること。あるいは、工夫を重ね、常に時代に合わせて改良を続けてゆくこと。
- ケ=「倹約」
- 無理や無駄を省き、合理化を進めて社業発展に尽くすこと。投機や暴利に走らない、保証人にならない、むやみに拡大しない、など金銭面に関すること。
- コ=「貢献」
- 家族や地域、社会などコミュニティに貢献すること。公共精神を持つこと。高い使命感を持って、社会や文化の発展に尽くすこと。