ダイアローグ160516

野心は会社のために


[この本に学ぶ]
『ビジョナリーカンパニー② 飛躍の法則』
ジェームズ・C・コリンズ著
日経BP出版センター(2001年)


ビジョナリーカンパニー2
前作(第1巻)は「永続する偉大な企業を一から築きあげるには、何が必要か」との問いに対する答えを示したもの。これに対して本書(第2巻)は、「どうすれば、良い企業(グッドカンパニー)は偉大な企業(グレートカンパニー)へと飛躍することができるか」への答えとして書かれたものです。

そして示されたのが、「第五水準のリーダーシップ」をはじめとする6つの新しい概念(下掲「NOTE」参照)。全編を要約すれば「どんな困難にぶつかっても最後には必ず世界一になれるのだという確信をもつと同時に、自分がおかれている現実を直視する」とともに「規律ある人々との徹底的な対話を通じて自分たちが世界一になれる分野となれない分野を見極め、なれる分野にエネルギーと情熱を傾注する」といった概要になります。

コリンズが、本書でとりわけ強調するのが「規律の文化」を築くことの重要さ。本書は、それを実現するための方法論を示したものともいえますが、そうした企業文化を築いていく上で原点となるのも、はやり「基本理念」。本書に登場する「三つの円」の概念でいえば、「情熱をもって取り組めるもの」、それが基本理念に当たります。

偉大な実績への飛躍を遂げた企業は、「会社の事業に皆で情熱を傾けよう」と呼びかけたわけではない。自分たちが情熱を燃やせること(=基本理念として定めた一貫した目的)に取り組んでいるのだから、情熱は自ずと湧き出てくる――基本理念とは、このような機能を果たすべきものであり、こうした機能を果たすべく、「われわれは何をするための組織なのか?」に対する揺るぎない信念を確立することが求められます。



第2巻では、偉大な企業への変化の過程を以下の「3つの段階」でとらえ、「6つの主要概念」を提示している。
  • 規律ある人材
    • 第五水準のリーダーシップ
      • 水準の指導者は、信じがたいほどの野心をもっているが、その野心はなによりも組織にむけられていて、自分自身にはむけられていない。
    • 最初に人を選び、その後に目標を選ぶ
      • 「だれを選ぶか」をまず決めて、その後に「何をすべきか」を決める。
  • 規律ある考え
    • 厳しい現実を直視する
      • どれほどの困難にぶつかっても、最後にはかならず勝つという確信を失ってはならない。
      • そして同時に、自分が置かれている現実のなかでもっとも厳しい事実を直視しなければならない。
    • 針鼠の概念
      • 「針鼠型」の人たちは、複雑な世界をひとつの系統だった考え、基本原理、基本概念によって単純化し、これですべてをまとめ、すべての行動を決定している。
      • 偉大な企業になるためには、「三つの円」(自社が世界一になれる部分/経済的に原動力になれるもの/情熱をもって取り組めるもの)が重なる部分を深く理解し、単純明解な概念(針鼠の概念)を確立する必要がある。
      • 針鼠の概念は目標でも、戦略でも、意図でもなく、「理解」である。
  • 規律ある行動
    • 規律の文化
      • 偉大な企業では、第五水準の指導者が持続性のある「規律の文化」を築き上げており、その枠組みのなかで従業員に自由と責任を与えている。自ら規律を守る人たちを雇い、人間ではなくシステムを管理している。
    • 促進剤としての技術
      • 偉大な企業は、自社の「針鼠の概念」に適合している分野の技術については先駆的に導入する。
      • 偉大な企業は、自社の可能性を実現したいとの動機によって行動する。凡庸な企業は、取り残されることの恐怖によって行動する。