ダイアローグ160515

基本理念を維持し、進歩を促す


[この本に学ぶ]
『ビジョナリーカンパニー 時代を超える生存の原則』
ジェームズ・C・コリンズ/ジェリー・I・ポラス
日経BP出版センター(1995年)


「ビジョナリーカンパニー」とは、先見的な(ビジョナリー)企業であり、業界で卓越した企業、同業他社の間で広く尊敬を集め、大きなインパクトを世界に与え続けてきた企業のこと。本書は、そうした「真に卓越した企業と、それ以外の企業との違いはどこにあるのか」を6年間に及ぶ膨大な調査から丹念にあぶり出したもの。そしてその源泉が「基本理念」にあることを解き明かした名著です。

本書では、従来信じられてきた数々の“神話”を打ち崩す一方、多くの画期的な概念を提示していますが、なかでも最も重要と位置づけられるのが、以下の4つです(詳細は下掲の「NOTE」参照)。
  1. 時を告げる予言者になるな。時計をつくる設計者になれ。
  2. 「ANDの才能」を重視しよう。
  3. 基本理念を維持し、進歩を促す
  4. 一貫性を追求しよう
基本理念とは、基本的価値観(組織にとって不可欠で不変の主義)と目的(単なるカネ儲けを超えた会社の根本的な存在理由)とを合わせたもの。「経営理念」のうち、とりわけその根幹を成す「不変」の部分であり、本書ではこの「基本理念」の一貫性をどこまでも頑なに守り通す一方、その他の部分については柔軟に変化させ、進歩を促すことの重要性を強調しています。

本書は1995年に第1巻が刊行された後、第2巻(2001年)、特別編(2006年)、第3巻(2010年)、第4巻(2012年)と全部で5巻が刊行されており、それぞれが異なる視点からの分析により新しい概念を提供しています(他の4巻についても順次概要をご紹介します)。



本書が提示する最も重要な概念は以下の4つ
  • 時を告げる予言者になるな。時計をつくる設計者になれ。
    • ビジョナリーカンパニーを築くのは、「時を告げる予言者」(=すばらしいアイデアや偉大なカリスマ的指導者)ではない。
    • 「時計をつくる設計者」(=ひとりの指導者の時代をはるかに超えて、いくつもの商品のライフサイクルを通じて繁栄し続ける会社を築くこと)たることが大切
    •  「ANDの才能」を重視しよう。 
      • 「ANDの才能」とは、さまざまな側面の両極にあるものを同時に追求する能力。「AかB」のどちらかを選ぶのではなく、「AとB」の両方を手に入れる方法を見つけ出す。
      • 例)利益を超えた目的現実的な利益の追求」「揺るぎない基本理念力強い変化と前進」「理念の管理 自主性の発揮」
    • 基本理念を維持し、進歩を促す。
      • 基本理念=基本的価値観+目的
        • 基本理念: 組織にとって不可欠で不変の主義
        • 目的: 単なるカネ儲けを超えた会社の根本的な存在理由
      • 常に理念に徹すると同時に、力強く前進しようとする。
        • 基本理念を明確にし、揺るぎないものにすることで、基本理念以外のすべてを変化させ、発展させるのが容易になる。
    • 一貫性を追求しよう。
      • 基本理念を目標とする進歩のために、会社の動きのすべての部分が協力しあう「一貫性」が必要。
      • 一貫性を達成するためには、以下のような指針のもとに働き続けることが必要。
        • 全体像を描く: 驚くほど広範囲に、驚くほどの一貫性を、長期に保っていくことが重要。個々の事実はささいなことでも、数百にも及ぶ他の事実と組み合わせたとき、一貫した全体像ができあがる。
        • 小さなことにこだわる: 従業員に強い印象を与え、力強いシグナルを送るのは、ごく小さなこと。
        • 下手な鉄砲ではなく、集中砲火を浴びせる: いくつもの要素が相乗効果を持ち、連携しあうよう、いっせいに一貫したメッセージを流し続ける
        • 流行に逆らっても、自分自身の流れに従う: 自社の基本理念と理想こそが、現実をとらえる際の指針
        • 矛盾をなくす
        • 一般的な原則を維持しながら、新しい方法を編み出す