ダイアローグ160416

「企業文化」を育てる


――企業理念が目指す究極のゴールはどこにあるのか?


当事務所が掲げる「経営理念でむすぶ、はぐくむ。」の「むすぶ」に込めた意味は前々回にお話ししました(≫160413)。そこで、ここでは「はぐくむ」に込めた意味の説明を通じて、質問に答えたいと思います。

「はぐくむ」には、人を育て、業績を伸ばし、会社を発展させるという一般的な意味ももちろん含みます。が、経営理念を通じて育てるべきもっとも大切なもの、それは「企業文化」だと私は思っています。

順を追って考えてみましょう。まず「文化」とは何か。『大辞林』には次のように書かれています。

社会を構成する人々によって習得・共有・伝達される行動様式ないし生活様式の総体。言語・習俗・道徳・宗教,種々の制度などはその具体例。文化相対主義においては,それぞれの人間集団は個別の文化をもち,個別文化はそれぞれ独自の価値をもっており,その間に高低・優劣の差はないとされる。カルチャー。

これにならって「企業文化」を定義すると、「会社を構成する人々によって習得・共有・伝達される行動様式の総体」となります。それぞれの会社が、それぞれの歴史の中で生み出し、培ってきた固有の行動様式の総体=風土が企業文化です。

習得や伝達は、自ずと「時間」の概念を含むものであり、企業文化もまた、創業者から次世代へ、そしてさらにまた次世代へと長い時間をかけて徐々に徐々に形成されていくもの。であるがゆえに、こうした目に見えない会社の資産が効果的に積み上げられていくためには、その方向性をあらかじめ定めたものが求められる――それが経営理念に他なりません。

わが社にとっていちばん大切なものは何なのか? それが明確に定義され、長期にわたってブレることなく守り続けられれば、「大切なもの」は少しずつ少しずつ厚みを増していく。その蓄積が企業文化を成すのです。

人は、そうした確たる文化なき社会では、まともに生きることができません。なぜならば、人がより良く生きるために工夫に工夫を重ね、膨大な時間を掛けて築き上げられてきた智慧の集積こそが文化だからです。

社員の心の中に静かに沸き起こる自社への「誇り」。そうした気持ちの源泉になるのも、それぞれの企業が持つ固有の文化に他なりません。

当事務所が掲げる「はぐくむ」の言葉には、経営理念を基本設計書としながら、会社を構成する幾世代にもわたる人びとによって企業文化を大切に育てていく、という意味が強く込められているのです。