――社員それぞれの「役割」をあまりキッチリ線引きすると、いわゆる“縦割りの弊害”を助長することになるのではないか。
経営理念とは、社会の中におけるあなたの会社の「役割」を明確に定義するもの。さらにはその定義の下、あなたの会社におけるそれぞれの社員の「役割」を明確に定めるための前提になるもの。そしてこのように「役割」が明確に定められたときに、人は最大限の力を発揮する、というお話を以前にしました(≫160305)。
このようにそれぞれの社員が、明確に定められた「役割」のもと、最大限のパワーを発揮することは、その総和としての組織のパワーを最大化することは言うまでもありませんが、その値は、単なる足し算以上のものとなる。なぜならば、そこには個々人相互の強い「結びつき」が生まれ、1+1=2以上の結果が生じるからです。
野球チームに例えれば、ピッチャーはピッチャーの役割に徹し、ライトはライトの役割に徹する。こうして9人がそれぞれの役割を全うしたとき、チームは最大限のパフォーマンスを発揮することになるわけですが、これが実現するためには、「投球はピッチャーに任せた」「外野フライはライトに任せた」というお互いの信頼関係が不可欠の前提となる。つまり、明確な役割分担は、メンバー間の深い信頼関係と固い結びつきなくしては成り立たないものゆえ、それらの醸成を促す要因にもなるのです。
おっしゃるように、役割の明確化、それ自体が“縦割りの弊害”といったものを生み出すことはありません。もし生じたとすれば、それは役割を明確化するということが内包する問題ではなく、「役割」というもののあるべき姿に対する理解の未熟さなどに由るものだと思います。
当事務所が掲げる「経営理念でむすぶ、はぐくむ。」の「むすぶ」の言葉には、以上のような私の想いが込められています。