――自社の「経営理念」を考えるとき、大切となるのはどんな視点か?
Integrityという英語があります。日本語に置き換えたときの意味は大きく分けて2つ。1つは「完全性、整合性、統合性、一貫性」といった感じ。そしてもう1つは「高潔、誠実」といった感じ。この2つの意味は、日本語で考えると、別々のもののように感じるのですが、実は非常に深い関係性の下に結びつくものであり、またそこには「経営理念」の真髄を読み解くヒントが隠されていると思います。
どういう関係かというと、例えばある人がいて、その人は信念にあふれ、いついかなる事態に遭遇しても普段の自分を失わない。決してブレることなく、自らの姿勢を貫きとおす。そうした一貫性を保つことのできる人は信頼に足る。高潔であり、誠実さが感じられる――というのが2つの意味を結びつける関係性であり、英語のintegrityが意味するものだと思います。
私はここまで、経営理念を「役割」という言葉と結びつけて語ってきましたが、確かに企業を、社会との「関係」を中心に考えた場合には「役割」という捉え方が相応しい。でもそうした「関係」性をひとまず脇に置き、一人静かに自分自身のあるべき姿を思惟するとき、そこに想い浮かぶのは「integrityを如何に保つか」という問題であり、それが自社の経営理念を考える上での核心的な課題になるように思えます。
「私たちの会社は、何を背骨に据えることによって整合性や統合性、一貫性を保つのか。そしてその結果、信頼を勝ち得るのか」――という問題です。