ダイアローグ160314

「やりたいこと」と「できること」


――経営理念とは、社会における会社の「役割」を明らかにしたものであり、その役割を広げていく、強化していくことが大切とのことだが…


商社に勤めていた頃、先輩社員からいろんな「いい話」を教えてもらいました。そんな中、とても印象に残っている話に、「仕事には3つの種類、3つの『こと』がある」という話があります。

3つとは、「やりたいこと」「やらねばならないこと」「できること」。そして大切なのは、この3つを自分自身のなかでどう意味づけて、どう実践するかということ。先輩いわく、その正解は――。まず「やらねばならないこと」。これは有無をいわず、やるしかない。どんなに嫌なことでもやるしかない。次に「やりたいこと」。これはいつも忘れず、持っていなければならない。夢として掲げていなければならない。

最後が「できること」。そしてこの話のポイントは、ここにこそある。つまり、大切なのはこの「できること」の領域を少しずつ、少しずつでも広げていく、高めていくということ。それこそが「やりたいこと」を実現するための、最も確実な唯一の方法なのだと。

私は、社会の中における会社の「役割」、組織の中における私の「役割」を、「上下左右を壁で囲まれた四角い部屋」に喩え、役割を拡張することは、壁を押して部屋の空間を広げるようなものと説明しましたが(#160305)、この話も意味するところは同じこと。壁を押して部屋の空間を広げていくことは、すなわち「できること」の拡張であり、それを「やりたいこと」(=経営理念)の実現に向けて実践していくことこそが大切だ、ということになります。

もうひとつ、印象に残る話が「着眼大局、着手小局」。もともとは中国の古典である荀子の言葉のようですが、今日では囲碁の世界でよく使われる。物事を大局的な見地から眺めながら、目の前の小さなことから実践するという意味の言葉です。そう、ここでいう「大局」は「やりたいこと」であり「経営理念」。そして「小局」は「できること」。

どの話もみな、経営理念のような「掲げるもの」と、それに基づく地に足のついた日々の実践の大切さを説いているようです。